肥満論
written byとぴあ

肥満の原因は約7割が生来の遺伝であるのが定説!ところがその肥満者を自己管理のできない怠け者だ云々と馬鹿にするのは、黒人を肌が黒いと蔑視するのと同様に社会的差別!確かに不健康な肥満は改善しなければならないけれど、それ以外で肥満者が不利益を蒙るのは概して社会的差別が存在するから!つまり太っていること自体が悪いのではなく、太っていることを醜いと感じ蔑視する社会的価値観こそが問題なのです!この社会的偏見があるから逆に健康を害してまでも痩せることに血眼になる愚かな女性が増加し、まんまとエステを太らせている!
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OLヴィジュアル系の思想1

テレビ朝日で現在放送されている鈴木紗理奈主演の「OLヴィジュアル系」
(注1)というドラマは、かなつ久美氏が描く人気漫画(注2)のテレビドラマ化ですが、誇張・単純化するという意味でのカリカチュア(戯画)化によって、現代の日本における若い女性たちの主流の考え方(思想)の本質を露骨に示しているという意味で、興味深い番組です。

局の番組紹介では次のように説明されています。

「出演:鈴木紗理奈,上原さくら,宝生舞。男を落とすためなら,ブスを超厚塗りメイクや美容整形で修正することもいとわないあの女たちが帰ってきた! 鈴木紗理奈,上原さくらに加えて宝生舞が加わる。エリート営業マン・関口(原田龍二)をつかまえた真恵(鈴木)は幸せ太りですっかり大デブになった。だが,ニューヨーク支社から戻ってきた関口が婚約者と名乗る美女,麗華(宝生)を伴っていたから大変。壮絶なバトルが繰り広げられることに!」
(注3)

‘大デブ’と言われているのは、具体的には身長=162cm、体重=120kgです。特殊メークで鈴木紗理奈がすっかり肥満した肉体に変身していましたが、あの特殊メーク
(注4)自体は大変見事なもので関心しました。しかし主人公(桜田門真恵)が抱いていた考え方(思想)自体は、余りにも短絡的で勘違いした哀れな思想であると言わざるを得ません。

その思想とは、すなわち──とにかく痩せれば、幸せになれる!

首都圏のOLを対象に行われた、あるアンケート調査
(注5)によると、回答者の65%がダイエットの経験があり、その彼女たちの内、「痩せるだけで悩みが解消され、生活が楽しくなるか」との問いに対し、「思う」と答えた女性が、20歳代では18.6%で、「ほぼそう思う」と答えた42.6%と合わせると、実に6割以上が、痩せることのみで幸せになれると考えているそうです。

しかし一方、さすがに30歳代では、「思う」「ほぼそう思う」を合わせて47%と半数を割り、「痩せても変わらない」が約4割でした。

確かに、肥満者を差別するような社会に生きる限りにおいては、そのような社会の価値観が変わらなければ、肥満していることで差別を被るという意味で、不幸であるのが現実です。しかし、「肥満」であること自体が、どのような社会どのような時代においても、普遍的に、即、不幸であるのか、と言えばそうではありません。
(注6)

日本肥満学会による肥満の判断基準では、BMI(ボディ・マス・インデックス=体格指数)
(注7)が22になる体重を「標準体重」と定めています。それはこの体重の時、肥満に基付く合併症が最も少なく、平均寿命が最も長いという「健康」上の観点からの規定です。「健康であることは幸福なことである」と考える限り、‘標準体重’からズレていればいる程、‘不健康’=‘不幸’だということになります。

合併症を引き起こすような肥満は、特に「肥満症」と言いますが、この様な状態に陥っているとすれば、まさに不幸です。しかしあくまでも統計的な基準である「標準体重」から多かれ少なかれズレていて「肥満」であったとしても、全く健康である人はたくさんいます。そのような人を「不幸である」と決め付けることはできません。肥満によって病気になるか否かは、個人差があるからです。

ですから逆に、痩せることで病気になれば、不幸なのですから、あくまでも健康上の観点からすれば、「痩せれば、幸せになれる」という思想は短絡的で間違っていることになります。

しかし呆れたことに、現代の日本の若い女性の多くが、健康を害してまでも
(注8)、痩せようとダイエットに勤しんでいるのが現状です。162cmならば、標準体重は57.7368kgです(注9)が、あのドラマの主人公が理想としていた体重は42kgで、標準体重とは、実に15kg以上ものズレがあります。

下着メーカーのワコール人間科学研究所が64年から実施している女性のボディ意識の調査によると、調査開始当初の20〜23歳の女性の理想の身長/体重は159.3cm/49.8kgでした。30年後の94年のデータは、現実の体がほぼこのサイズに近づいているにもかかわらず、理想値は、161.9cm/47.9kgとさらにスリム志向になっています。
(注10)その調査から7年程経っている現時点では、162cm/42kgという、あのドラマのOLの理想値も、現代の若い女性たちのさらなるスリム志向の意識を遠からず反映していると思われます。

(注1)
テレビ朝日系・金曜日11:09pm〜0:04am
(注2)
『週刊女性』連載中。
(注3)
http://www.tv-asahi.co.jp/ov/
(注4)
http://www.tv-asahi.co.jp/ov/debu/index.html
(注5)
化粧品などを取り扱っている長瀬産業が1998年に実施。蒲原聖可『肥満とダイエットの遺伝学──遺伝子が決める食欲と体質』(朝日新書)、52頁参照。
(注6)
社会的価値観の反映としての体型
(注7)
BMI=体重(kg)/身長(m)の2乗
(注8)
しかし、世の中には、いわゆる‘健康オタク’と言われる人が多くいます。「体にいい情報渇望症──『健康ブーム』時代の幻想」『AERA』1998.12.14号
(注9)
標準体重=1.62×1.62×22=57.7368kg
(注10)
「『やせたい教』からの脱出──ダイエットの心理学」『AERA』1997.6.9号.7-8頁参照。

(2001.4.24初出)


OLヴィジュアル系の思想2

鈴木紗理奈が演じる「OLヴィジュアル系」
(注1)の主人公(桜田門真恵)には、共感しながら見ている方々が多いようです。特にダイエットに苦労している女性の方々から、肥満してしまった肉体を何とか1年前の自分の誕生日のスリムな体型(注2)に戻そうとダイエットに勤しみ努力する彼女の姿に共感するという意見をよく聞きました。

あのドラマの主人公が、過激な食事制限や運動をしてダイエットしている最中の口癖は、「がんばれ、私、ファイトだ、自分!」です。彼女にとっては、太っている今の‘自分’は、仮りの姿であり、本来の‘自分’は、スリムな肉体の持ち主でなければなりません。その本来の‘自分’は、当然、彼氏に愛される‘自分’です。

確かに、現代日本社会に流布しているような社会通念、すなわち、‘肥満’は、食欲を抑制できず、運動もしないで寝てばかりいる(‘食っちゃ寝、食っちゃ寝)’
(注3)、自律性を欠く怠惰な普段の生活様式が肉体に端的に表われたものであり、従って‘肥満者’は社会的に劣等な人間であり落伍者であるとする、このような短絡的な社会通念が支配的な状況におかれている限り、そのような劣等者・落伍者の烙印を押されないためにも、必死でダイエットし痩せようとするのは、当然の行動様式であると言えるでしょう。

前回紹介した統計からも判るように、現代日本における若い女性たちが‘ダイエット’する目的は、必ずしも健康のためだけではありません。なぜなら最も健康にとって最適な‘標準体重’──‘健康な体’を優に超えた‘美容体重’──自分にとって‘美しい体’
(注4)を目指して痩せようとするのが一般的な傾向だからです。(注5)

多くの場合、若い女性が精を出す‘ダイエット’の目的は、概ね、単純に‘彼氏’に気に入られ愛されることです。いわば、痩せれば、‘彼氏’に愛され、だから幸せになれる、というのが彼女たちの考え方(思想)なのです。
(注6)

実際には、彼女が太っても痩せても、それ程、彼氏は気にしているわけではないのに、往々にして彼女は、その‘彼氏’を、「努力して痩せたら、ご褒美に幸せにしてあげるよ」と勝手に妄想して‘幻想の王子さま’と見なしてしまう傾向があります。

もっとも、実際には、上記の‘肥満’についての社会的通念・価値観を疑問なしに受け止め、内面化した既成社会の代弁者に過ぎない男性も多くなっているのが現状です。

彼女は彼の言動をいちいち気にします。それは‘彼氏’が自分の社会的アイデンティティー(自己同一性・存在証明・拠り所)を確かめるための、いわば‘鏡’になっているからなのです。

だから、‘彼氏’に「君、ちょっと太ったんじゃない?」とか「お前、デブだなぁ」と言われることは、それは即ち、彼女たちにしてみれば、自らの社会的なアイデンティティが否定されたことに等しい、大変衝撃的な事態なのです。

ましてや「太ってても構わないよ、中味が大事なんだから」とか「痩せれば可愛いのに…」とかいう彼からの言葉に含まれる言外の意味は、実は「君は太っている」=「醜い」ということであり、彼女たちにしてみれば慰めになるどころか、却って劣等感を増すようなものです。
(注7)

あの叶姉妹の姉の恭子などは、「太っているのは愛がないから」などとうそぶいていましたが、あのドラマでも「恋に燃えている女が太るわけがない。太るのは恋を忘れた女、つまりおばさんさ」と、主人公の見合い相手の男性に言わせています。肥満している女性は、化粧や服装と同様に、‘他人の目’を気にせず、身だしなみに気を使わない、だらしない人間であると見なされているわけです。

(注1)
テレビ朝日系・金曜日11:09pm〜0:04am
http://www.tv-asahi.co.jp/ov/
(注2)
公表されている 鈴木紗理奈のプロフィール:162cmB:82cm/W:58cm/H:85cm
因みにマリリン・モンローの3サイズ:B:93cm/W:59cm/H:84cm
(注3)
前回で紹介した長瀬産業のアンケートによると、ダイエットにくじけそうになった時の対処法について、「寝る」と回答したOL女性が全体の34%を占め一番多い結果でした。蒲原聖可『肥満とダイエットの遺伝学──遺伝子が決める食欲と体質』(朝日新書)、52頁参照。
(注4)
‘健康な身体’と`美しい身体’──脂肪の視点
(注5)
OLヴィジュアル系の思想1
(注6)
なんつったって、ダイエットには恋愛が一番!

(注7)
太目でもオッケー!?

(2001.4.25初出)


OLヴィジュアル系の思想3

鈴木紗理奈が演じる「OLヴィジュアル系」
(注1)の主人公(桜田門真恵)は、自分が恋する彼氏に気に入られるためには、手段を選ばず、「がんばれ、私、ファイトだ、自分!」と口ずさみながら、なり振り構わずに痩せようと涙ぐましい努力をします。痩せれば即、幸せになれると思い込んでいたからです。

すなわち、彼氏とデートを約束した自分の誕生日までに元の体型に戻るため、たった10日の短期間で120kgから42kgまで1日約8kgの減量
(注2)をしようと無謀な、従って間違った‘ダイエット’(注3)に精を出すことになるわけです。

さすがに漫画だから、こんな過激な目標設定をしたのでしょうが、普通、1ケ月に体重の5%以上を減量すると、必ずリバウンドが起こるばかりか、他にも色々な健康上の支障をきたすことが報告されています。
(注4)

ただし、「リバウンド」自体は、むしろ身体のホメオスタシス(恒常化機能)が正常に働いている証拠であり、この現象を敵視することは間違っています。問題なのは、短期間の過激な間違ったダイエットをすればする程、生命の危機を感じた身体がこの機能を働かせ、生命を維持しようとする結果、却って、痩せない体質の体をつくってしまう──ダイエットジレンマでしょう。

自らのダイエット経験に基づいて、ダイエットに関する評論を書いているフリーライターの萩原みよこ氏は、前回
(注5)でも引用したように、ダイエットするきっかけが、概ね異性にもてたいという目的であるにしても、ダイエットに努力する過程で、ダイエットそのものに、いわば‘自己実現’の達成感を感じ、ダイエットが自己目的化する傾向があることを指摘しています。

しかしこの傾向は聞こえは良いですが、ダイエットが自己目的化すると、‘足るを知らず’、際限なく、下手をすると骨と皮になるまで徹底的に痩せて、挙句の果てに命を落とす事態にまでなってしまうことがあります。

そこまで行かなくてもダイエットをしにエステに通うためにクレジットでローンを組み
(注6)、挙句の果てはサラ金・闇金に手を出し、首が廻らなくなって風俗嬢になったり(注7)、結局、‘自己実現’ならぬ、‘自己破産’に追い込まれてしまう、いわば‘ダイエット中毒’の人たちが世の中には大勢いるわけです。まったく馬鹿げた嘆かわしい社会状況であると言わざるを得ません。(注8)

特に拒食症の人は、激ヤセのために周りの人々が心配して注意しても、自分が痩せ過ぎているという自己イメージを持たないそうです。
(注9)彼女たち(まれに彼たち)は、いつまでたっても社会に受容されているという幸福感を持ち得ないが故に、生存の限界まで痩せ続け、時には死に至るまでも痩身し、社会に適応しようとし、結局は社会への過剰適応という結果に陥っているという意味で、自己イメージの錯誤を伴う社会性が欠如しているのです。

「OLヴィジュアル系」の主人公の桜田門真恵の場合も、‘恋は盲目’とはよく言ったものですが、恋する彼氏、換言するなら、社会の代弁者に気に入られたいという一心で、彼氏による評価のみに全面的に依存し周りの意見に耳をかなさい、社会性も自立性も欠く、エゴむき出しの人物であると見なすとこができます。

(注1)
テレビ朝日系・金曜日11:09pm〜0:04am
http://www.tv-asahi.co.jp/ov/
http://www.tv-asahi.co.jp/ov/debu/index.html
(注2)
中国の青年が100日間で80kg減量したのが短期間に減量した世界記録だそうです。
(注3)
必ずしも‘間違ったダイエット’とは言えませんが、巷にあふれるダイエット法(お手軽度順)を列記しておきます。
 
◆食物系:
・やせるガム・やせるミネラルウォーター・ダイエット茶
・単品ダイエット:りんご・こんにゃく・ゆで卵・寒天・豆腐
・補助食品群:アロエ・きなこココア・スリムコーヒー・オオバコ・ギムネマ・ガルシニア・酢大豆ダイエット・一週間ダイエット・玄米食ダイエット・地中海式ダイエット・[宮本美智子]式ダイエット・4.3.3.式ダイエット

◆運動・器具系:
・ウォーキング・イメージトレーニング・歯みがきダイエット・ツボ刺激・ダンベル体操・ジョギング・ストレッチ体操・スーパーモデルのフィットネスビデオ・中温反復入浴法・リフレクソロジー・バレイストレッチ・ボクササイズ・ダンスエクササイズ・リンパドレナージ・水泳・スパイラルテープ・バンソウコウ、ラップダイエット・矯正下着・スリミング化粧法・やせる石鹸、入浴剤・ダイエットスリッパ&サンダル・サポートストッキング・ダイエットリング&イヤリング・メンソールリップ、マニュキュアダイエット・サウナスーツ・ループ(ゴムバンド)エクサイズ・塩もみマッッサージ・マッサージ器具・タラソテラピー・アロマテラピー・アーユルヴェーダ・低周波器具

「『やせたい教』からの脱出──ダイエットの心理学」『AERA』1997.6.9号.8頁参照。なお上記のダイエット法は1997年時点のものであり、その後もぞくぞくと新しい方法が喧伝されているのはご存知の通りです。

(注4)
過度のダイエットのために、12歳から19歳の十代でも、骨はスカスカで常にイライラした気分になり記憶力も低下しているばかりか、不妊症の症状を示すような更年期障害を起こしている少女たちが多いことが報告されています。例えば不妊症になる経緯は次の通り。

ダイエット
  ↓
体重の減少
  ↓
体脂肪の減少(体脂肪率15%以下)
  ↓
卵巣機能の低下
  ↓
卵巣ホルモンの低下
  ↓
月経不順
  ↓
無月経
  ↓
不妊症

(東京新聞2000.9.18付より)

(注5)
OLヴィジュアル系の思想2
(注6)
エステ業界破産の構造
(注7)
ホストな世界の蟻地獄
(注8)
「ダイエットジレンマな人々」メルマガ2001.02.03号。萩原みよこ氏日く「ダイエットは理性ではできません。目を覚ましてしまったら、これほどバカげた行為はないですよ。お菓子を食べるのをやめるためだけに、百二十万円エステに払ったりするわけですから。」『AERA』2000.7.17号。「ダイエットという快楽
(注9)
「拒食症の哲学的考察」メルマガ2000.11.21号。

(2001.5.1初出)

そこヘン日本人論その3
OLヴィジュアル系の思想4

肥満は、普段の怠惰な生活習慣の結果だという現代の日本の社会にはびこる偏見に反して、鈴木紗理奈が演じる「OLヴィジュアル系」
(注1)の主人公(桜田門真恵)は、彼氏に気に入られたいという一心からにせよ、減量のためにダイエットに励む、実に真面目な努力家でした。

しかしそれにもかかわらず、彼氏と約束した自分の誕生日であるデートの日に目標とする減量が間に合わないと見るや、彼女は、費用が100万円もかかる「脂肪吸引」手術を受けようとします。

この手術は、美容整形の一種なので、医療保険の対象にならないため高額なのですが、努力せずに一気に体型を整形しようとするものであり、自律的に努力して生活を律し、健康な体を育もうとするダイエットの精神とは異質です。

まさに医療行為であり、本来なら法律的には宣伝できないはずのこの手術の宣伝広告では、脂肪がついているとして女性たちがコンプレックスを抱く体の各部分(頬・顎・上腕・ウエスト・上下腹部・大腿内側・大腿外側・大腿膝上・足首…)ごとに値段をつけ(例えば一箇所25万円より)、ダイエットによる努力では不可能な、いわゆる‘部分痩せ’を簡単にかつ一挙に実現すると謳っています。
(注2)

しかし例えば「スタイルを整える・・・それは『見えない』おしゃれ」
(注3)などといった耳障りの良いキャッチコピーを弄しはしても、その手術後の、しばしば死亡にも至るような危険性(注4)について言及することはめったにありません。

よく広告では、脂肪吸引をした後は「リバウンドがない」とか、「太らない体質になる」とか述べていますが、これは間違い、あるいは嘘です。と言うのも、脂肪切除実験の結果判明しているように、体脂肪の総量は常に感知され、一定量になるように調整されており、たとえ外科手術によって一時的に脂肪が取り除かれたとしても、必ず体は失われた脂肪分を回復するように働くからです。そのように体脂肪をコントロールしている上位システムが中枢神経にあり、そこに食欲中枢があり、体の消費エネルギーを調節しているわけです。
(注5)

さらに重要なことは、脂肪組織は単に中性脂肪を蓄えるだけではなく、免疫系などに必須の物質を作る機能を果たしていること
(注6)が最近判明し、脂肪を安易に取り省くことの危険性が自覚されるようになっているということです。

さて「OLヴィジュアル系」の桜田門真恵は、結局、100万円を用立てることができず、この手術を受けることを諦めるのですが、土壇場になって、怪しげな‘痩せ薬’
(注7)を手に入れ飲むことによって、120kgから42kgへと、3日3晩眠り続けたにせよ、努力することなく、劇的に痩せることに成功します。

このことは、このドラマが、まさに魔法使いの‘魔法の杖’の一振りによって一瞬にして、みすぼらしい‘仮りの自分’から本来の‘美しい自分’に変身したとする、あの「シンデレラ」物語の一亜種であることを物語っています。あるいは‘彼氏’に気に入られるというモティベーション(動機付け)によって、‘彼氏’に愛される‘本来の自分’に変身したという意味では、王子様のキスによって、眠りから目覚める「眠り姫」の物語の一亜種であると見なすこともできるでしょう。

(つづく)

(注1)
テレビ朝日系・金曜日11:09pm〜0:04am
http://www.tv-asahi.co.jp/ov/
http://www.tv-asahi.co.jp/ov/debu/index.html
(注2)
脂肪吸引を勧める広告
(注3)
脂肪吸引を勧める広告
(注4)
脂肪吸引による死亡事故について

このサイトで「脂肪吸引」をはじめ、美容整形の危険性も含め懇切丁寧に説明し、相談役になっているのが、実際に開業している美容外科の名取春彦氏です。そして、彼には『ヴィーナス・コンプレックス』という著作があり、その本の「はじめに」で彼は、こう書いています。

「美容外科には、個人の生き方が深く関与する。だから美容外科医療では、患者個人と医者個人との関わりが大切になってくる。患者と医者のコミュニケーションがなければ、美容外科は始まらないのである。そのような考えから、説明重視という独自のスタンスが生まれた。」
(中略)
「女性美の基準は、『男性中心社会』の都合のよいようにつくられてきた。フェミニズムは、女性をその呪縛から解放するものである。美容外科が患者のためのものであるならば、美容外科の女性を見る目は、フェミニズムの立場に立たなければならない。」「つくられた美の基準に縛られるのは、女性ばかりでなく男性も同じである。男女を縛りつける『男性中心社会』という怪物を操るものは、実は男たちではなく、その正体はコマーシャリズムだったのである。この本は、ヒューマンサイエンスとしての美容外科は、コマーシャリズムに踊らされることのない自立した人間形成をめざすものであることを訴える。」

このように男性が‘フェミニズム’の立場に立つと主張したり、‘人間’などという抽象的な概念を持ち出すと、決まって、その‘当事者性’を問題にされて、‘フェミニズム’の女性たちに批判されることがありますし、同時に知識を独占する医師という‘専門家’の‘政治性・権力性’や病院経営者の‘資本の論理’など、この言説によっていろいろと考えさせられるものがあります。

(注5)
蒲原聖可『肥満とダイエットの遺伝学──遺伝子が決める食欲と体質』(朝日新書)、88-93頁。
(注6)
「最近、脂肪組織が体に必須な重要な内分泌器官の一つであることもわかってきた。脂肪組織は、単に中性脂肪を蓄えるだけではなく、免疫系などに必要な物質を作る機能をもっているのだ。脂肪組織は、レプチン以外にも腫瘍壊死因子(TNFα)やアデノシンアミナーゼ、PAI-1(plasminogen-activation-inhibitor 1)といった生理活性物質を産出する内分泌器官である。脂肪組織が少ないと、これらの産出量も少なくなる。そのため、痩せていると風邪などの感染症にかかりやすい。この点からは、適度な量の脂肪組織は健康の維持に不可欠であるといえる。」同上、59頁。

ただし、免疫系に有益な物質であっても、過剰な量の脂肪組織から過剰に発生する場合は、いろいろな成人病を引き起こすことは指摘しました。「肥満の内と外──パイの量
(注7)
痩せるなら、死んでもいい!?──危険な‘やせ薬’

(2001.5.4初出に加筆)



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