肥満論
written byとぴあ

肥満の原因は約7割が生来の遺伝であるのが定説!ところがその肥満者を自己管理のできない怠け者だ云々と馬鹿にするのは、黒人を肌が黒いと蔑視するのと同様に社会的差別!確かに不健康な肥満は改善しなければならないけれど、それ以外で肥満者が不利益を蒙るのは概して社会的差別が存在するから!つまり太っていること自体が悪いのではなく、太っていることを醜いと感じ蔑視する社会的価値観こそが問題なのです!この社会的偏見があるから逆に健康を害してまでも痩せることに血眼になる愚かな女性が増加し、まんまとエステを太らせている!
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肥満のセオリー
モードとしての体型
  1. グラマーからウルトラスリムへ
  2. 社会的価値観の反映としての体型
  3. 社会的価値観の反映としてのウェスト
  4. 通俗エコロジーと痩身志向的価値観
  5. ‘おデブ系の時代’
  6. 体型の3類型:スレンダー・グラマー・プランパー
  7. キューバの境界線──顕わす身体/隠す身体
  8. なぜ女性は身体にこだわるのか?
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グラマーからウルトラスリムへ

「グラマー」という日本語ですぐにイメージできるのは、マリリン・モンローであり、007のボンドガールであったり、往時の『プレーボーイ』誌のグラビアに出てくるような巨乳でお尻も大きいにもかかわらず、ウエストは締まっていて細くくびれた、いわゆるボン・キュ・ボンの'曲線美 (curvaceous)'の大柄で豊満な肉体を持った女優やモデルではないでしょうか?

ハリウッドにおいて、M・モンローよりもその肉体の曲線を顕著に体現していた女優としてはジェーン・マンスフィールドがいましたし、乳房やお尻の大きさに比して特にウエストが締まった体型を有していた女優としては、イタリアのソフィア・ローレンを想起することができます。この体型の観点からするとフランスのブリジット・バルドーの肉体は見劣りがしました。
(注1)

因みにチェロやウッドベースのフォームはくびれた女性の体型に似せた物であり、コカコーラの瓶からは、同じアメリカ産という意味でもマリリン・モンローの'曲線美'をイメージできます。

しかし英語(米語)の'glamour'という言葉は、必ずしも「肉体的な豊満さ」を意味するわけではありません。この言葉には「魅力」「魅惑」「(特に女性の)うっとりさせる美しさ」「性的魅力」という意味が含まれています
(注2)が、「肉体的な豊満さ」に美的魅力を感じるかどうかは、あくまでも社会的・時代的・個人的に相対的です。(注3)

例えば、ブリジット・バルドーと同じくフランスの監督ロジェ・バディムの恋人でグラマー体型の‘セックスシンボル’として売り出したジェーン・ホンダが、フィットネスのブームに乗って、エクササイズのビデオを出して、引き締まったスレンダー体型を賞揚したように、時代は痩身志向に移って行きます。

特に'八頭身'でかつ'曲線美'を美の基準にしている'ミス・ユニバース'や'ミス・ワールド'のいわゆる'美人コンテスト'にスポンサーが付きにくくなっているという噂も聞かれるように、現代の欧米日本などのいわゆる'先進国'においては、必ずしも'豊満な肉体'の女性が人気があるわけではありません。往々にして下手をすると彼女たちでさえ'デブ'と呼ばれてしまうのが現状なのです。

「アメリカ女性の体型の理想と現実」というロサンジェルスタイムズ紙の記事
(注4)でも指摘されているように、米国の現在のハリウッドにおいては、キャリスタ・フロットハート(注5)を初めとする、いわゆる'激ヤセ(ultra thin)女優'がぞくぞくと登場して来ているそうです。(注6)因みに記事では、ハリウッド映画の配役担当のディレクターの、女優を採用する場合に「いくら有能だとしても、少し太っている(a little too round)と雇えない」という言葉を伝えています。

また、あの米国の『プレイボーイ』誌の50年に渡るグラビアモデルの体型の変化を研究した論文が英国の医学誌に発表されましたが、それによると、最近になる程、バストとヒップのサイズは減少しているのに比べて、ウエストのサイズは増加するという、いわば‘ずん胴’体型になっている傾向が見られたそうです。
(注7)

(注1)

スティ-ブ・サリバン(Stieve Sullivan)氏の一連の'glamour girls'研究の集大成である著作には、20世紀を代表する1500名の'グラマー・ガール'のランキング(氏が主催する雑誌の読者の人気投票による)が表示されています。上位20名とそのバストサイズは次の通り。

1.マリリン・モンロー 94C
2.ラクウェル・ウェルチ 94C
3.ジェーン・マンスフィールド 102D
4.ブリジット・バルドー 91B
5.リタ・ヘイワード 93C
6.ベティ・ペイジ 91
7.ソフィア・ローレン 96C
8.ジーン・ハーロー 85B 86
9.ジューン・ウイルキンソン 109
10.シンディ・クロフォード 86B
11.アン=マーグレット 93D
12.エリザベス・テイラー 91C
13.アニタ・エクバーグ 100
14.マミー・バン・ドーレン 96D
15.パメラ・アンダーソン・リー 86D
16.シンシア・マイヤーズ 99DD
17.サマンサ・フォックス 91D
18.クラウディア・シファー 90C
19.ウルスラ・アンドレス 95
20.キム・ノヴァック 94

('Glamour Girls:The Illustrated Encyclopedia',St.Mortin's Griffin,New York,Dec.1999)

なお上のバストサイズの表記は米国のものなので次のサイトで実際にどれ位の大きさなのかをビジュアル的に確かめられます。
http://www.afraidtoast.com/woman/sizes.html リンク切れ

因みにS.Sullivan氏の他の著書は次の通り(BACHELOR誌'00.10月号の紹介記事参照)。

"Va Va Voom!Boobshells,Pin-ups,Sexpots and Glamour Girls",General Publishing Group,Rhino,1995
"Glamour Girls of the Century;Glamour Girls Then And Now magazine",Jan.1998
"Boobshells Glamour Girls of a lifetime",New York,June.1998

(注2)
『ニューセンチュリー英和辞典(第一版)』(三省堂)P.534
(注3)
フェミニズムの立場から、スージー・オーバックは、スレンダー←→グラマーとまるでシーソーのように短期間にくるくると変化する理想体型に女性は翻弄されて来たとして、その理想体型の変化を具体的に記述しています。

「歴史の諸段階において、また異なる社会の中で、女性はその地域の考える性的魅力にあわせて自分の身体を変容するように努力してきた。ルネッサンス以来、女性の理想体型は、豊満さの強調からその一八〇度対極の、ヴィクトリア朝の十八インチのウエストに至るまで揺れ動いてきた。十九世紀のアメリカにおいては、最初の六〇年は『か弱く青白いきゃしゃな女性』が好まれた。一八六五年、イギリスの音楽堂スタイルの美しさが、リリアン・ラッセルの容姿に代表されるように、アメリカ人の理想像を一新してしまい、『グラマーな女性』が猛威をふるった。十九世紀末になると、背の高い筋骨たくましいギブソン風の女性が流行の主流になったが、一九一〇年には、それを小型にした方向のピックフォードやクララ・ボウに代表される小柄でボーイッシュなモデルが登場した。一九二〇年代を通じて、ペチャンコな胸のフラッパー(現代風)が勢力をふるったが、一九三〇年代から五〇年代終わり頃までは、女性の美しさが再び豊満な曲線、豊かな胸、ひきしまったウエストによって代表されるようになった。流行からの逸脱は常に大目に見られていたし、実際正反対の流行や幾種類もの流行が同時にあらわれたものの、主流をなす理想像は時代を超えて存在した。」スージー・オーバック『拒食症──女たちの誇り高い抗議と苦悩』新曜社、94頁。

(注4)
'Size zero to hefty,the feminine extremes',Los Angeles Times
(注5)
NHKでも放送されている米TVドラマ「アリー・myラブ」で情緒不安定気味の若い女性弁護士を演じている。
(注6)
Calista Flockhartの他には、Lara Flynn Boyle,Courtney Thorne Smith,Sharah Michelle Gellar,Paula Devicqなど。
(注7)
http://cnn.co.jp/science/K2002122300059.html
プレイボーイのモデル、ここ50年でずん胴に 英医学誌

(2000.11.13初出,に加筆)


社会的価値観の反映としての体型

概して、好まれる体型は、各々の時代や社会の価値観を反映しています。このことを僕は「モードとしての体型」と呼んでいます。

この「モードとしての体型」を「理念型」
(注1)として時系列的に概観するならば、(1)風土的に常に飢餓状態の不安に苛まれていた‘未開’あるいは‘発展途上’の社会においては、女性の理想像は大地の豊穰を象徴するように、豊満であることが健康であり美しいと考えられていました。(注2)

この時代・社会において、いわゆる‘原始神母’のイメージの元になっているのは妊婦であったでしょう。従って乳房やお尻だけでなくお腹も大きかった多産型の体型が理想とされたのです。(→プランパー体型)

それに対して、(2)‘大きいことは良(善)いことだ’という高エネルギー消費の高度経済成長の価値観に基づく‘豊かな社会’(ガルブレイス)においては、邪魔になる程の大きな乳房やお尻を有しながら、ウエストは締まった体型が好まれました。(→グラマー体型)(注3)

ただし、‘大きいことは良(善)いことだ’という経済成長社会の価値観を反映して、巨乳や巨尻が好まれたというのは理解できますが、なぜウェストが締まっていなければならないのかということに関しては、別稿
(注4)で私見を述べたいと思います。

さらに、(3)大量生産・大量消費の負の結果として、資源枯渇問題や環境汚染問題を引き起こしてしまった、いわゆる‘ポスト工業社会’(ダニエル・ベル)においては、‘省エネ’や‘エコロジー’の‘スモール・イズ・ビューティフル’(シューマッハー)の発想から、運動もせず飽食をして不節制の結果、肥満してしまった人間は不健康であり自己コントロールのできない劣等な者として嫌われ、それに対して、痩身者は日常的に節制している成功者として評価され、特に女性の体型もその考えを反映して、痩せていればいる程、節制して美しいという価値観が支配的になっています。(→スレンダー体型)

(注1)
体型の3類型:スレンダー・グラマー・プランパー
(注2)
「美」という漢字は「肥えた羊」を意味する合意文字であり、古代中国人の価値観を反映していたことについては別稿で述べました。「ダイエットと美意識の問題
(注3)
グラマーからウルトラスリムへ
(注4)
社会的価値観の反映としてのウェスト

(2000.11.15初出,に加筆)

社会的価値観の反映としてのウェスト

周知のように、動物行動学者のデズモンド・モリスは、他の動物と比べてヒトの雌(女性)の乳房が大きく発達しているのは、乳房が実はお尻の擬態であるからだという説を提示しています。
(注1)

四足歩行の場合に性的に雄を直接的に惹きつけるのは、お尻(臀部)ですが、ヒトが二足歩行をするようになってからは、体の前面にある胸をまるでお尻のように膨らませることによって、雄を性的に惹きつけるようになったというのは慧眼(けいがん)です。確かに谷間ができた豊かな胸と割れ目のあるお尻の形はよく似ています。
(注2)ヒトの雌はこのような目立つ大きなお尻や乳房を有する体型を自ら形成することによって、雄の性的関心を喚起し性交を促し生殖することで妊娠・出産して子孫を残すことができたというのはなかなか説得力がある見解だと思います。

ところで、常に飢餓の不安を抱いていた原始人や古代人にとっては、大きなお尻や乳房と共に何よりも大きく膨らんだお腹の妊婦の体型は豊穰・多産の典型であり、崇拝の対象でさえありました。
(注3)

ところが西欧近世(1987年から始まるヴィクトリア朝)の時代になって、まるで砂時計のように胸やお尻はかなり大きいものの、ウェストが極端に細い女性の体型が男性にとってエロチックであると感じられるようになりました。乳房の谷間を強調するように大きく胸を開き(あるいは逆に肌の露出を極力避けて)、クジラのヒゲで形造ったフレームでお尻のシルエットが巨大になるようなドレス(クリノリンスカート)を着用すると共に、特に特徴的だったのは、コルセットなどで、できる限り締めつけ究極までウェストを絞った体型の女性たちに近世の男性たちは性的魅力を感じる?
(注4)ようになったのです。(注5)

ここで女性の体型の理想として、近世以前の時代と大きく違っているのは、お腹(ウェスト)の大きさ(太さ・膨らみ)、くびれの具合です。

それではなぜ現代にまで続いているように、近世以後の男性たちの多くが、砂時計やコカコーラの瓶のようなボンキュボンの体型に‘グラマー(うっとりさせる美しさ)’を感じ、性的に魅せられるようになったのでしょうか?

私見ですが、その理由は、社会が豊かになるにつれて飢餓に対する不安がなくなり、それに伴いセックスの目的も単に生殖のためではなく、あくまでも快楽の追求だけになる傾向が強くなったことが関係しています。すなわち生殖の結果の妊娠で膨らんだお腹の対極にあるのが、あの細いウェストなのではないのかと思うわけです。

敷衍(ふえん)しましょう。ウェストが細ければ細い程、くびれていればいる程、乳房やお尻の大きさが強調されるわけですが、そのような‘グラマー’体型の女性は、大きな乳房とお尻で十分にセックス(女性性)をアピールしつつも、ウェストが細いということで「妊娠はしない」
(注6)と安心させることで、男性の目には、あくまでも快楽追求の対象としての‘セックスシンボル’のように映るのではないか、というのが僕の仮説です。(注7)

(注1)
裸のサル―動物学的人間像』角川文庫
『マンウォッチング〈上〉』小学館ライブラリー
『マンウォッチング〈下〉』小学館ライブラリー

「臀部の擬態としての乳房。人という種は、雌が半球状の乳房と臀部をもっている唯一の霊長類である。二つの部位の類似性は、乳房を押し上げたり、半球間の割れ目を強調する衣服によってさらに高められる」。デズモンド・モリス『マンウォッチング──人間の行動学』藤田統訳、小学館、240頁。
(注2)
これは知り合いのある女性の画像です!ここをクリック
お尻!?いや違います(^^ それでは、「おっぱいBoobies)、それともお尻(Butt)クイズ」をやってみよう!\(^^)/ここをクリック
(注3)
社会的価値観の反映としての体型
(注4)
実際には男性と女性の心理には微妙な齟齬(そご)があったという事実がありますが、その点については別稿で論じます。
(注5)
詳しく言うと、ヴィクトリア朝の時代においてクリノリンスカートが一世を風靡したのですが、その巨大化の後、突然に衰退し、その後にさらに過激にウェストを絞りに絞るコルセットが流行するというモードの変遷があります。例えば、戸矢理衣奈『下着の誕生──ヴィクトリア朝の社会史』参照。
(注6)
そのイメージ・思い込みとは逆に、実際には、ウェストが引き締まっている程、妊娠しやすいのだそうです。「オランダのある人口受精のクリニックでの調査によると、ヒップに対するウェストの比(Waist-to-Hip Ratio 略してWHR)が0.1増えると、受胎率が30パーセント下がるといいます。」「たとえば、ヒップが90センチのままウエストが63センチ(WHR=0.7)から72センチ(WHE=0.8)に増えると、受胎率は30パーセントも落ちるのです。」(内臓脂肪が圧迫し子宮の機能を低下させるのでしょうか?いわば「グラマー体型」程、妊娠しやすいということになりますが、しかし「スレンダー体型」になるとまた話は違って来ます。別項で「拒食症」を論じる際に言及したいと思います。)

この調査を竹内久美子氏がエッセー集『小顔・小アゴ・プルプル唇』文芸春秋(100頁)で紹介しているのですが、このタイトルに使われている女性の顔の3つの特徴は、「女性ホルモンの一種であるエストロゲンの働きによる」ものであり、従って「生殖能力が高い」ので、男性たちはそのような特徴の顔の女性を美人として感じ、惹きつけられるのだそうです(99頁)。非常に荒っぽい論述ですが、一応、傾聴しておきましょう。
(注7)
このように書いた時点では、僕は、不覚にも、いわば砂時計型の体型とマリリン・モンロー型の体型を「グラマー体型」として同一視してしまっていました。しかしコルセットで締め付けた鋭角的なウエストラインを示す前者と、そのコルセットを外した結果、丸みを帯びた、横から見た場合のS字型のシルエットラインを示す後者の間には、根本的な質的相違があるということを、博物学者の荒俣宏氏によるファッション画などの一連の詳細な研究によって認識させられました。荒俣氏は次のように、その相違と共に、いわゆるダイエットが発生した経緯を明解に説明されています。

「一般にファッションの歴史を語る人びとは、コルセットの追放が女性の解放と重なりあうかのように語る。ところがコルセットの追放は、実際のところ女性に別の束縛を強要したにすぎなかった。というのも、コルセットは乳房を下から支え、あのたわわな盛りあがりと谷間をつくりだしていたからである。もしもコルセットをなくせば、乳房は下に垂れさがる。そこでブラジャーが発明されて乳房を吊りあげる一方、今まではコルセットが押しつぶしてくれていた腹部が一気に突きでてくる現象にも、対処しなければならなくなった。新しいパンティーの開発が必要となるのと同時に、腹部の贅肉をとらなければならなくなった。ダイエット、あるいはエステテッィクの発生である。」「これはコルセットと同様に、女体へ新しい不自然を強要した。」(荒俣宏『ファッション画の歴史 肌か衣か』平凡社.196-197頁。)

(2000.11.16初出に加筆,)

通俗エコロジーと痩身志向的価値観

1960年代の、いわゆる大量生産・大量消費の高度工業化は一方で‘ゆたかな社会’を生来させたにもかかわらず、まさにその結果、他方では60年代後半から顕在化したのは、資源枯渇問題であり、環境汚染問題でした。

いわば60年代に高度工業化社会と言われた欧米日本などのいわゆる‘先進国’で遂行された経済成長のメカニズムは、あたかもたとえば大量の燃料を燃やして風呂のお湯を加熱し過度に沸騰させた挙句、熱くなり過ぎたお湯を大量の水を使ってぬるめるような、エネルギーや資源を浪費すればする程、GNP(国民総生産)が増加するような代物でした。

ところで高カロリーの食物を摂取し過食の結果、健康を害するまでに肥満してしまった人々が痩せるためにジョギングなどの運動をしてカロリーを消費して‘ダイエット’に努力する人間の行動様式は、まさにこのような経済成長のメカニズムをそのまま体現しているものだと言えます。
(注1)

しかし経済成長のメカニズムを押し進めるなら、表での大量のエネルギー(石油などの再生不可能な化石燃料などの資源)消費による大量生産が、裏では再生不可能なエネルギー=エントロピーを大量に発生させてしまうのであり、必然的に資源問題や環境問題を引き起こしてしまいます。

これらの社会的な問題への反省から、人口増加や経済成長を抑制しなければ食料や資源不足で人類は滅んでしまうと警告するローマクラブの『成長の限界』
(注2)が著わされ、さらに70年代初頭に台頭して来たのが、いわゆるエコロジー運動でした。

このエコロジー運動の思想も現在ようやく一般化し、しかし矮小化される形で、企業も‘省エネ’で‘地球にやさしい’商品を生産し、消費者がその種の商品をありがたがって消費するという経済活動に具現化されています。

確かにエコロジー思想そのものには誰の批判をも許さない程の‘正当性’があるように見えますが、ただし歪曲された‘通俗エコロジー’思想が、肥満者を差別する社会的風潮を生むことにおいて、影響していると僕は考えています。

すなわち、大量生産・大量消費の飽食の時代への反省から、過食し‘肥満’することをひたすら嫌悪し、‘肥満者’は自己コントロールのできない愚者として軽蔑し、それに対して‘痩身者’は自己節制した優秀者であり、痩せていればいる程良(善)いという社会的価値観が現在、支配的になっているのも、‘通俗エコロジー’の影響があると思うのです。
(注3)

因みに米国の美容整形手術では、豊胸手術に比して、鼻を小さくする手術の他に胸を小さくする手術の割合が高くなって来ているそうです。
(注4)またミス・アメリカや『プレーボーイ』誌のグラビアモデルも年々細目になって来ていると言われています。ハリウッド映画において‘激ヤセ女優’が増えて来たという事実もそうですが、このような痩身志向の傾向(注5)は、経済成長の神話が崩壊した後の現在のポスト工業化社会の社会的価値観を端的に表現していると言えるでしょう。

ところで、2000年のベストセラーになった『「捨てる!」技術』の発想が、いわゆる摂食障害の‘過食・嘔吐’の発想──「太るのは嫌だ。でも、食べることの快感を失いたくない。だから、吐く…」──とそっくりだと言う指摘を水島広子氏がしています。
(注6)下記の文章を読むと、なる程と得心が行くでしょう。

「このままでは、いつまでたってもモノの呪縛から解き放たれない。」「エコロジーや節約生活が注目されているように、モノを大切にして不要なものは買わないことが、この呪縛から逃れる方法なのだろうか。いや、買うこと=モノを増やすことをやめてしまうのは、あまりにさみしい。入ってくるモノをなくせばモノはいずれ減り、すっきりしてくることはあきらかだ。でも、よほどストイックな人でもないかぎり、それで楽しく暮れせるとは思わない」。
(注7)

水島氏は、さらに美容整形の広告にも、体脂肪をゴミ扱いする発想があるとして、こう述べています。

「家の中の不用品と体脂肪とを同列に見るというのも変な話ですが、数々の美容整形の広告を見ると、納得させられます。不要な脂肪を吸引する、不要な脂肪を切り取る、不要な脂肪を燃焼させる、と、まるで家の中のゴミのように体脂肪が扱われているのです。体脂肪も人体という生命体のシステムの一部であるという認識が欠けてしまって、ただ『無駄だからとってしまえば良い』という感覚になってしまっているのでしょう。」
(注8)

(注1)
カロリー一元論の落し穴」
(注2)
『成長の限界──ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』ダイヤモンド社。なおローマクラブはいわば多国籍企業のイデオローグの集まりであると言えます。
(注3)
周知のように、E・F・シューマッハーが著わしたエコロジー思想を踏まえた広義の経済学の著書の題名は『スモール・イズ・ビューティフル──人間中心の経済学』『スモール・イズ・ビューティフル再録』講談社学術文庫です。

ただし、シューマッハーが提唱しているのは、「大きいことは良いことだ」というテーゼに対して、アンチテーゼとして「小さければ小さい程良い」という価値観を単に提示しているわけではありません。

本当は、巨大技術・巨大開発による物質主義的な行き過ぎた経済成長の考えを批判して、地球環境や地域環境を踏まえ、人間の精神性を尊重した‘身の丈’にあった抑制の効いた経済を復興しようという提唱を彼はしているのです。

この考えは、いわゆる「地域主義」(『地域主義からの出発 玉野井芳郎著作集』学陽書房)や「スローフード」(マクドナルドのような‘ファーストフード’に対して、地域ごとの特産や季節ごとの旬の食物をじっくり味わおうと提唱している)運動にも通じています。「スローフードとしての粗食

そして、実は「サイズ・アクセプタンスの思想」にも合い通じるものなのです。
(注4)
ミルトン・ダイヤモンド著『セックスウォッチング──人間の性行動学』小学館
(注5)
グラマーからウルトラスリムへ
(注6)
水島広子『「やせ願望」の精神病理──摂食障害からのメッセージ』PHP研究所、62-63頁。
水島広子氏は、現衆議院議員で、精神神経科の医師であり、摂食障害の臨床医の経験から、‘拒食症’や‘過食症’に関して示唆的な説明をされています。
(注7)
辰巳渚『「捨てる!」技術』宝島社
(注8)
前掲書、24-25頁。‘脂肪吸引’については「OLヴィジュアル系の思想4」も参照。

2000.11.17初出,に加筆)


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